無人運転による人身事故で知ってほしいこと

生活品質
ひんまに
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品質まにあ(@hinshitsumania)です。

私のふるさとで無人運転の車両による人身事故が発生しました。

横浜市の新交通システム「シーサイドライン」でのことです。
本来とは逆の方向に走り出し、車止めに激突し、14人の方が重軽傷を負ったということです。
シーサイドラインは開業当時から身近だっただけに、とても悲しいニュースです。

関係者の話によりますと、「逆走は今までになく、全く想定していなかった」といいます。
国土交通省などが調査を始めたようですが、原因究明までに1年かかるという意見もあります。

この事故に関しましては、実に多くのコメントが寄せられていて、多くの方々が「原因究明」を望んでいます。

30年間無事故だっただけに、原因が分かるまでには時間がかかると、私は考えています。
無人運転の専門家ではありませんので、正確な原因を申し上げることは出来ません。

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私はあえて、今回は別の視点で問題提議したいと思います。

想定が出来るなら、安全対策は出来たはずです。

今回のキーワードは『形骸化』です。
形骸化ということを意識しながら、無人運転の事故と向き合っていきます。

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■シーサイドラインの無人運転について

シーサイドライン

新交通システムと言うものを採用しています。

この新交通システムは、1983年に標準規格が定められ、シーサイドラインはこの標準規格を採用した最初の路線と言うことです。

無人運転とは

乗務員が乗らない自動運転のことを言います。

この自動運転にはいくつかのタイプがあるようです。運転手と車掌が乗るタイプ。運転手だけが乗るタイプ。運転手ではなく添乗員が乗るタイプです。

シーサイドラインと同じ規格を採用し、無人運転を行っているのは、
六甲ライナー、ゆりかもめ、日暮里舎人ライナーになります。

シーサイドライン自動運転安全のメカニズム(出典:シーサイドライン)

ATO装置(自動列車運転装置)が、運転操作を行い、

ATC装置(自動列車制御装置)が、安全管理を行っています。

■事故を想定するってどういうこと?

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品質の分野では「FMEA」というものがあります。

FMEAは、故障や不具合を未然に防止することを目的にして、各分野の専門家が集まって、起こるかもしれない故障モードを分析する手法です。

自動車業界では、安全や規制を守るために、導入された歴史があります。
国内外のカーメーカーと、取り引きする為には、必要になるということです。

私はここに限界があると感じています。

それはなぜか?

 

“各分野の専門家が集まる”

FMEAを行う上では、必要なことになります。

これは組織が抱える最高の集団になるわけですが、過去の経験からしか、未来を想定することが出来ないからです。つまりメンバー次第。
そもそも鉄道など、過去の事故や失敗を活かして発展しているので、過去の経験を活かすことが、とても大切だということは、充分に理解しています。

そしてもう一つ。
企業は利益を求めるものです。想定されることすべてに対策は行わないのではないでしょうか。故障が発生する可能性が、限りなくゼロに近いとか、低いものには”対策”ではなく”点検”を行う。

 

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ここに問題があるのではないかと問いたい。

 

■品質的な考え方~形骸化

それでは開発当時の方々が想定していなかったかどうか。
少なくとも30年間は、大きな問題がなかったというわけですから、想定されることすべてが、管理されている状態だったのではないでしょうか。

それが少しずつ変化していった。

開発に関わっていた人たちが、30年経っていま、どのくらい残っているのでしょうか。

当時と変化しているところを、正確に把握できる方がいるのでしょうか。
このあたりが原因究明に、時間が必要な理由かと想像します。
劣化する部品は、すべてが想定どおりに管理されていたのでしょうか?
メンテナンスは規定どおりに、抜け漏れなく行われていたのでしょうか?
手動運転で再開させて、いつの間にかそれが当たり前になるのではないか?
品質を担当していると、細々うるさいことを言っているかもしれませんが、
もしも何か一つでも「気づき」が見つかれば、未然防止につながるかも知れません。
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人身事故を起こしてはいけません。

形骸化とは、当初の内容や意味合いがなくなり、形だけが残っているようなことをいいます。
例えばクレームを出したとします。会社が傾くほどのクレームなら、仕組みや体質を変えるほどの改善が必要ですよね。
たくさんのルールが作られます。このルールは、多少の改版があったとしても代々伝わっていくわけですが、30年も経てば・・・。

このルールは何であるんだっけ?

要らないんじゃないの?

守っている規則類や、理由が分からないでやっている点検は、形だけになっている恐れがあります。

■まとめ

今後も無人運転、自動運転は増えていく一方でしょう。
JR東日本でも終電後に実験を行い、先ほどのATO装置の導入に向けて、技術開発も進んでいることでしょう。
電車や自動車、ヘリコプターなど、可能性はどんどん広がっています。
新幹線やリニアの逆走は絶対に許されません。
日常点検や、作業者などの教育訓練は、特に形骸化しやすいです。
ルール等は定期的に見直すことが必要です。
ひんまに
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『継続的な改善』は品質システムのあるべき姿なのです。

コメント

  1. T。かしわ より:

    私は、ワードプロセッサ200万台、家庭用洗濯機の基板300万台分の品質保証を担当したものですが、市場からの返送品の約10%が電子制御部品でその内の半分は、工場ではどうしても再現できないものでした。
     このことから①制御部品は、稼動中ある確率で必ず壊れる。②CPUなどのLSI内臓の装置は非再現モードの異常が発生することを
    認識すべきである。
     特に人間が乗る交通機関では、高機能なCPU部分については、複数構造としないと突然重篤な事故が発生する。ちなみに1990年代では、新幹線車輌は米国のアポロなみに3重系CPUで、エレべータは2CPU方式で、重複チェックしていた。外国エレベータ製造社
    の痛ましい死亡事故で、再現するしないが争われたが、CPUも異常動作することがあるので、多重系のCPU構造か判断すべきであった。 信頼性的には、制御回路もCPUもいつかは壊れるのです。壊れても安全な方向に機能するよう知恵を働かせるのが技術です。
     なお自動車の複雑機能化にも全く同じ論理が通用します。新品では正常に動いても、長時間稼動による劣化異常は防げません。

    • 品質まにあ 品質まにあ より:

      T。かしわ様
      コメントいただきまして、ありがとうございます。
      考えることの多い、とても勉強になるお言葉に、感謝しかございません。
      「必ず壊れる」「異常が発生する」「劣化異常」。これらは今後、AIの進歩などにより、形が変わっていくのでしょうか。
      「壊れても安全な方向に機能するよう知恵を働かせる技術」。これは当たり前に出来ているものと、考えている人が多いように感じます。
      だからこそ、物事の裏側に目を向けてくれる人が、もっと増えてほしいと願っております。